2026年4月2日

大学の体育・スポーツ演習科目としてのヨガ

  大学でヨガを教えるようになって9年目。大学で体育科目としてヨガを教えることについて、忘備録のように書いておこうと思う。

 大学の授業において、共通教養科目のカテゴリ、体育・スポーツ演習のひとつとして、ヨガはトレーニング・フィットネス・エクササイズ系と位置づけられている。しかし、ヨガは運動量(身体活動量)が低い。安静時を1 METs(メッツ)としたときハタヨガは2.3 METs(太陽礼拝は3.5Mets)とされている(身体活動のメッツ表)。普通歩行(約67m/分)、ボウリング、太極拳、軽い自転車漕ぎ(16km/時未満)が3 METsなので、それらよりもヨガは運動量が低いのだ。ヨガは呼吸と共に気持ちよくストレッチしてるのだから(常温環境で実施した場合)消費カロリーも少ないし、運動として成立するの?という評価になるのは、「運動量」という尺度から判断した場合であろう。実際、期末に「ヨガは運動といえるのか」という小論文を課した際、履修者の9割から「ヨガは運動といえる」という論旨のレポートが返ってきた(講師への忖度があったかもしれないけど)。運動量が低くてもヨガは運動といえる理由として、個別に様々ある(個人で体験したヨガの効果が違う)点が、ヨガの優れているところだと私は思う。総じて、「ヨガは健康に役立つ」という結論に至り、アーサナが身体動作だから運動になる、とまとめられていた。現代の一般的な大学生(体育・スポーツ専攻でない学生)の運動観を垣間見た気がする。一方で、競技アスリート学生(インカレや国体に出場するレベル)のレポートでは、心身の疲労回復に役立つ効果(ヨガの自律神経系への作用)について発見があったとしつつ、運動ではないと論じている。まあ、そうなるよね。

 ヨガにおいて運動量の低い身体動作(アーサナ)を練習するのはなぜか?大学の授業として成立させるためには、明確な目的が必要になる(ストレッチが気持ちいいから、では説得力に欠けるので)。ヨガにおいて身体を修練する目的は、“アーサナ(坐法/姿勢)が快適で安定していなければならない(ヨーガ・スートラ第2章46節)”とされるため、という説明が初心者から経験者まで納得してもらえるように思う。一方で、医科学的に計測してみれば、二足歩行のヒトは立位や座位姿勢を維持する際に微妙に揺れが生じており(健常者の重心動揺)、完全に静止することはない。重心動揺は心拍動や呼吸と関連して動揺し、外気温、加齢に伴う筋力低下、個人内の体調や疲労度によって変動するとされる。従って、自分の日常の姿勢に意識を向け、より快適で安定させるために身体を修練してみよう、これが授業の到達目標になる。

 ところが、ヨガの効果として多くの人が期待するのは、柔軟性の向上である。健康・体育・スポーツ領域において、柔軟性とは関節を動かせる範囲(関節可動域)を意味している。一般的には、関節可動域を安易に増大させると怪我や痛みのリスクを高めので、”動きやすさ”の改善にアプローチする、というのが講師としてのスタンスになる。ただし、“動きやすさ”に関わる要素は多岐にわたり、個人差が大きく、努力で変えられない因子も存在する(詳細は割愛)。履修者には「あなたが“動きやすさ”を向上させるために授業で取り組んだ経験を今後のあなたのライフスタイルに生かす展望」をみつけてほしいと思う。

 さあ、今年度もどのように伝えていけるだろうか。

2026年3月30日

映画『ジョン・クランコ バレエの革命児』を観て

  


 クランコについて語れる人たちが集結して作った、もしかしたらドキュメンタリーよりもリアルな映画だと思った。映画に関するレポートは、この記事が読み応えがあります。

 1960年代は、私のお気に入りのバレエ作品が次々と初演された時代で、生まれる前の出来事だから本や解説文を色々と読んで想像を膨らませてきたけれど、当時をこれほどリアルに感じられたことはなかった。バレエの「ロミオとジュリエット(以下、ロミジュリ)」に関して、多くの人は(クランコ版でなく)先ずマクミラン版を観るけれど、クランコがいなければ、マクミラン、ノイマイヤー、キリアンの作品が生まれなかったかもしれない、らしい。

 ロミジュリはクランコ版とマクミラン版を見比べたり(今はどちらも映像があるので、一場ごとに見比べられるけど、20年前はクランコ版の映像が手に入らなかったなぁ)、様々なダンサーで観るのもそれぞれ個性があって、面白い。ダンサーがロミジュリを「生きて」くれれば、どちらの版でも私は大満足です。

 個人的にクランコ版の方が好みの場面があって、ひとつは一幕のバルコニーの舞台セットで、庭木や鉢植えのある邸宅のバルコニー。ふたつめは2幕1場のマンドリンの踊りで、衣装も振付もウィットに富んでいて楽しい。そうそう、この映画を観て初めて知った事実のひとつが、舞台美術家のユルゲン・ローゼを見出したのがクランコだったこと。映画ではロミジュリの舞台セットを2人で構想するシーンがある。ユルゲン・ローゼは、ノイマイヤー作品の舞台美術・衣裳を担当していて、私がノイマイヤー作品を好きな理由はこの舞台美術・衣裳があるからだろうな、とずっと思っていた。クランコ版ロミジュリの舞台セットが好みの理由、明々白々。

 シュツットガルト・バレエを私がリアルに観たのは、2002年の日本公演でロミジュリだった。ロミオ役がウラジーミル・マラーホフで、彼のオーラが圧倒的だったことは今でもよく覚えている(マラーホフは当時ABTとシュツットガルト・バレエでプリンシパルだった)。でも圧巻だったのは、マリシア・ハイデのキャピュレット夫人がティボルトの死を嘆くシーン、凄すぎた。夫人の感情が自分の内臓を掴んできたような体験は、はじめてだった。

 映画でもクランコが言っていた、「言葉で表せない感情を表すために身体を動かせ」。踊るという身体動作が感情を表すためにある、それができるように、稽古しなければならない。そういえば、ヤン・ヌイッツ先生もそう言っていた。「ダンサーの身体は楽器であり、楽器を使って表現をするのだから」

 この映画を観た数日後、ヤン・ヌイッツ先生が永眠されたと聞き、言葉にならない感情があふれて、もう一度この映画を観たくなった。


2024年6月8日

呼吸を練習して「より良く生きる」

  呼吸はツールとして意識的に使うことができるものだと思ってきた。例えば、自律神経系の切り替えツールとして。ヨガの呼吸法には、交感神経と副交感神経をそれぞれ優位にさせるものがあるし、ピラティスやエクササイズでは呼気のタイミングで腹筋を使う。ダンスでは音楽と共に身体を動かすために呼吸を操る必要がある。呼吸のクセが体幹の強さに影響すると薄々感じていたけれど、それすらも抑え込めるようにするのが体幹の強さだと思っていた。

 日常での呼吸を改善するために練習する必要性を多くの人が感じているらしい。アフターコロナはマスク生活を定着させ、精神的だけでなく身体的にも深呼吸することが難しくなった。

そして、きほんの呼吸®︎ を練習する機会を得た。人それぞれ異なる呼吸動作を定量化する試みと併せて、呼吸動作をより良くするためのエクササイズの数々は、すぐに出来なくても狙いが理解しやすく、効果を体験できるところが面白い。目下の課題、風船を膨らませる際に肩と首を使いすぎないこと。


追記

 きほんの呼吸®︎ 呼吸トレーナーLの資格を取得しました。バレエ・テクニック+呼吸、ヨガ+きほんの呼吸®︎、きほんの呼吸®︎をすべての人にお伝えできるようになりました(残念ながら日本語のみ)

 呼吸動作の要である横隔膜。体幹の機能に関わる横隔膜と骨盤底筋群(骨盤隔膜)を連動させるために、呼吸筋を使ってトレーニングしていきます。


2022年8月6日

バレエ・リーブルが幕を下ろす

 バレエ・リーブルが2002年秋にスタートして20年が経ったこの夏、クローズした。

 社会人になってから「バレエ・リーブル所属」の肩書に安穏としてきた私にとって、アイデンティティの喪失にも等しい感じがある。近年は大学での活動が増えたけれど、根っこはバレエ・リーブルにあるからこそ枝葉を伸ばせた=様々な挑戦をすることができたと痛感する。

 バレエ・リーブルに、郷路先生に、20年間もお世話になり、本当にありがとうございました。

2021年11月23日

10年ぶりにヴィーガンの話

  10年前の今頃、私はヴィーガン食生活を実践していた。ヨガインストラクター資格の取得期間中はヴィーガニズムを実践してみる、という指導に則ったもので、私のヴィーガン食生活は数か月間だった。実践中も「カツオ出汁や煮干し出汁が使えない料理は、オイルが多くなるし、味付けが濃くなるから好きじゃないよ~」と思っていて、シャロン先生の著書で「自分を思いやることは地球環境を思いやることと繋がっている」と理解はしても、その後はほぼヴィーガニズムから距離をおいて過ごしてきた。

 ヴィーガンは(どんな理由で実践するにしても)個人の選択であって、例え健康を害する結果になっても個人の責任だ、というのが10年前にヴィーガン食生活を実践した際に、私が認識した周囲からの評価だった。ヴィーガンに興味のない人にヴィーガンの話をしても困惑されて迷惑がられるだけだという体験から、食の選択(食の嗜好?)はプライベートな話だから安易にコメントしない方が無難だと思ってきた。それが、近年そうではなくなったことを知った。

 朝日新聞で月1回発行される日曜版GROBEで「ヴィーガン」が特集された。私が距離をおいてきた10年の間に、ヴィーガンに対する理解や認知度が様変わりしていていた。栄養士は「健康に問題がない」と述べ、研究者は「地球のために必要な取り組み」と評価し、病院や学校では全員にヴィーガン食が提供され、大学生はヴィーガン食生活を実践する俳優をオシャレと認識している。トップアスリートがヴィーガン食で競技成績を残していることが話題になり、ヴィーガン食≒不健康というイメージが消えつつあるのかもしれない。病院や学校でヴィーガン食が提供されるということは、食が個人の選択でなくなったことを意味する。Z世代と呼ばれる人たちは、ヴィーガン食生活の実践を周りの人に呼びかけている。

 「今日はカレー、イタリアン、それともマクドナルド?」と同じような感覚で「今日はヴィーガンにしよう!」という会話をする日が、すぐに来るのかもしれない。10年前の私の言い訳は、もはや存在しなくなっていた。あとは、ヴィーガン食生活を実践するか、しないかだけ…。


2021年2月17日

新型コロナ禍の1年、ヨガとバレエへの影響について考えたこと

 新型コロナ禍の影響がヨガとバレエに大きな変革をもたらしたことを、私なりに考えてみた。制限された対面(リアル)に代わるオンライン(動画配信を含む)という手段は、ヨガとバレエへ及ぼした影響が少し違うと感じている。

 ヨガにとってオンラインは、より多くの人にヨガへのアクセスを容易にしたと言われる。狭い部屋でも気軽に参加でき、凝り固まった心身へアプローチできる、多少でも運動になる、ストレス解消など、ヨガの有益性が大学の一般教養体育において認知されたと実感した。オンラインのヨガは、受講者にとって参加しやすく、コロナ禍での需要に応えるものになった。実際にオンラインでヨガを教えてみると、受講者の反応がリアルタイムでは捉えにくい。受講者の身体が画面から確認しにくいので、ポーズの正確さを指導することは難しくなった。オンラインでヨガを教え続けると、オンラインで伝わりやすい内容に偏っていくかもしれない。例えば、ポーズの形をチェックはできたとしても、受講者がどんな呼吸をしながら身体を使っているか、画面越しに判断することは容易ではない(使用する機器や部屋環境に影響される)。オンラインで伝えられるヨガの内容と、対面で伝えられるヨガの内容には、違いがあるかもしれない。

 バレエにとって、オンラインはコロナ禍での苦渋の選択だった(例、ローザンヌ国際バレエコンクールがオンラインで開催された、世界中のバレエ団が無観客の公演を有料動画配信した)。この選択は、芸術的な視点からみれば致命的なのではと感じる。世界中のほとんどのバレエ団が財政難らしいから、動画配信による収入を否定する気はもちろんない。劇場へ行かなくてもバレエを観られるというメリットは、観客にとっても大きい。ただし、劇場というリアルを捨てる選択は、舞台上のダンサーの踊りで劇場の空気感や雰囲気を観客が各々で味わうというエッセンスを捨てることだ。例えば、スポーツ感動名場面の番組放送で大事なのは、実況アナウンサーによる情感の誘導だと感じることがある。スポーツ感動名場面がキライではないし、すごいと思う。ただし、画面からの試合やスタジアムの雰囲気と空気感は、アナウンサーの言葉から想像しているのであって、本当に現場でリアルに自身で感じたものではない。バレエを観に劇場へ行くのは、ダンサーが踊ることによって観客が味わえる雰囲気や空気感を自身で感じる、味わうことだ。バレエを踊るダンサーを画面から観ても、私の部屋の雰囲気を変えてはくれない。ダンサーが劇場でリアルな観客にむけて踊る機会が減ることは、ダンサーが自身の踊りでその場の空気感を作る、つまり、観客を感動させる能力を失うことになるんじゃないかと思えてくる。その代わり、注目される動画に必要なのは、"すごいテクニック"になるだろう。テクニックの難易度によって観客を感動させられるなら、バレエはスポーツに分類できると思う。でも、バレエで観客を感動させるエッセンスが情感なのだとしたら、逆説的にバレエのテクニックが情感を呼び起こす手段なのだとしたら、バレエは芸術だと思う。ちなみに、バレエの舞台に実況アナは要らない。踊りから何を感じるかは、自由で、個人的なものだから。

2021年2月16日

ブログ10年目、写真を変えました

 コロナ禍での生活が1年を過ぎようとしています。出来なくなったことが、いくつもあります。一方で、出来たことも、いくつかあります。その1つが、写真を更新すること(10年で更新すると決めていたわけではなく、そうなってしまっただけですが)。

 写真は、プロフォトグラファーの秋山逸美さんに撮っていただきました。ありがとうございました!初めてお会いしたのは陰ヨガの講座に参加したときで、写真撮影を担当されていました。その写真がとても素敵だったので、プロフィール写真を撮ってもらうときにはお願いすると決めていました。光の回り方が好きです、と伝えたら、こだわっています!と仰っていました☆撮影が楽しい時間となりました。

 ヘアカットはsalon dakotaの小谷英智香さん。いつも、今回も、ありがとうございます。





2020年2月8日

やっと、文章にしてみた(加筆修正あり)


クラシックバレエとヨガの講師として活動してきて、今更ながら悶々と思うこと(笑)。



 クラシックバレエとヨガにおける身体的な共通点としては、正しいとされる姿勢(静止状態)を習得しなければ、動き(バレエのムーヴメント、ヨガのフロー)の習得が困難になること。姿勢の習得には、身体内部の感覚を養うこと(自己観察)、身体の構造としくみを理解して客観観察の経験を積むことの両方が必要だと考えます。
 クラシックバレエおよびヨガにおける教育の現場では、講師自身の身体感覚の経験を基にして生徒を指導することが多く、身体の構造としくみを理解させ生徒に客観観察の経験を十分に積ませることができているとは言えないでしょう(私自身も含めて)。この問題は、姿勢、ポーズやダンステクニックにおいて、具体的にどの筋を使用することが有効なのか(トレーニングすべきか)に関する検証がまだ十分ではないと感じています。

 クラシックバレエとヨガの姿勢に共通する身体的な特徴として、股関節、膝関節及び足関節の可動範囲がとても大きいことがあります。広範囲に関節可動域を使って、優雅に踊る(クラシックバレエ)又は落ち着いて呼吸する(ヨガ)というのは、かなり特異的な身体の使い方ではないでしょうか。
広い関節可動域で動くためには、関節に作用する筋の体積が大きいと邪魔になり、筋収縮レベルが高すぎると呼吸が制限されて優雅な動きにならない(例えば股関節伸展動作について、大殿筋とハムストリングをメインで使ったところ、呼吸と優雅な動きは実現できなかった)。この個人的な経験に対して、納得のいく説明や解決策を示してくれる知見にはまだ出会えていません。つまり、”広い関節可動域を確保しつつ、負荷(自体重×姿勢)に耐えられる筋力”とはどのくらいか?さらに、その可動域を使って動く(動作)となると、どこの筋をターゲットにすべきか??
そのような基準は恐らくありません。理由のひとつは身体的な負荷の個人差が多きすぎること、特に、動きによる負荷は講師毎(レッスン毎)に千差万別。そのため、身体的な負荷を定量化しにくく、ターゲットが決まりきらない?理由の2つめは、広い関節可動域を得るために必要な筋力どう解釈するか(何をどれくらい必要とするのか)?理由の3つめは、広い関節可動域を使うことに焦点をあてた筋の機能が科学的にまだ十分明らかにされていないこと(少なくとも一般的に知られていない)。例えば、腕を挙げる筋は1つだけではないが、何を根拠にどれを選ぶのか?

 ……ここまで書いて、自分の身体感覚に対して(価値があると信じられる?)根拠、妥当性が欲しいのだ、と今更ながら思い知る。勉強した知識を人に話すことができたとしても、伝えること(話した内容を経験してもらうこと)は困難だった。自己観察から得られた良い(好ましい)身体感覚について人に伝えるために、その根拠がある程度必要だとは思う。
堂々巡りなので、打ち切り。

(漠然としていた思いを書くのに7年もかかったな


2019年6月8日

Dance for PDを体験して考えたこと

 パーキンソン病患者のためのダンス・プログラムがあることも知らなかった。でも興味を引かれた理由は、マーク・モリス・ダンス・グループのメンバーが作り上げたプログラムがダンスの喜びと楽しみを享受できるようデザインされている、という記述。同月、世界パーキンソン病学会が日本で開催されるのに合わせて、彩の国さいたま芸術劇場で行われたDance for PDのシンポジウムとワークショップに参加してみた。


 プログラム創始メンバーの一人であるディヴィッド・レベンサールさんは、立ち姿からダンサーそのもの。デモンストレーションでみせてくれたディヴィッドのダンスは、美しく鮮やかで、見惚れてしまった。マーク・モリス・ダンス・グループの元プリンシパルなのだから、当然なのかもしれないけど。立って踊るのが難しいパーキンソン病患者のために、ダンス・シーケンスやインプロ(即興)パートは椅子に座って踊ることができる。座っていようとダンスは制限された感じがなく、空間を移動できなくても周囲とコミュニケーションするダンスが多いので開放感があった。
 思い出したのは、NDT(ネザーランド・ダンス・シアター)にⅢがあったころ、日本公演(2002年???)で観た「バースデイ」とナハリン振付の「マイナス16」。どちらの作品も前半部分ではダンサーが椅子に座って踊る。座ることで上半身のムーヴメントはよりダイナミックになり、自由にみえた。ダンスのだいご味は回転技やジャンプの高さにあるわけじゃない、と知った。

 Dance for PDのプログラムの特徴として、ディヴィッドが強調したのは「セラピーやリハビリとしてでなく、芸術としてのダンス・クラスを提供すること。なぜなら、ダンスは心と身体をつなぐ認知行動を刺激し、自己表現や感情表現を促し、社会性を養い、喜びをもたらす。従って、ダンス・クラスの指導は身体機能に熟知したスキルを持つ人でなく、ダンサー経験のある人が望ましい。」つまり、Dance for PDのクラスを指導するには、ダンスに慣れていない参加者をダンスへ連れていける雰囲気、美しさ、音楽性、即興性などのアーティストであることが重要、ということになる。ダンスをしたい人にダンス・クラスを提供することはそれほど難しくないだろう。でも、ダンスに乗り気でないかもしれない未経験者に、身体が動かしづらいことも忘れてしまうようなダンス経験を提供するのだ。すごいなぁ…。


 実際にワークショップでディヴィッドのクラスに参加して、とにかく楽しかった。もう脚を高く上げることも、浮遊感のあるジャンプも、キレのある回転もできなくなった私が、踊ることに没頭できるなんて信じていなかったから。久しぶりにダンスを楽しむ経験をさせてくれたディヴィッドに感謝。ニューヨークで彼のクラスに参加できる人たちがうらやましい(笑)。


 その他に、Dance for PDのメソッドは、アダプテッドなダンス・クラスとして成り立つ可能性があると感じた。話は飛躍するが、東京オリンピック・パラリンピック2020が決まってから、見聞きすることが多くなった「アダプテッド・スポーツ」という言葉。その意味あいは、「スポーツのルールや用具を障害の種類や程度に適合(adapt)させることによって、障害をもつ人はもちろんのこと、幼児から高齢者、体力の低い人であってもスポーツに参加することが可能になる(矢部京之介先生・名古屋大学)」。シッティング・バレーボール、ゴールボールやボッチャなどは、健常者と障害者が一緒に楽しめる種目として紹介されることも増えた。ずいぶん前に、体育の授業でダンスが必修となったとき、どんなダンスを授業で取り上げるかが話題になったと記憶している。ダンスを楽しむ人が多くない日本は、つまり、ダンスの楽しさを知る機会が少ないとも言えるだろう。アダプテッドなダンス・メソッドやクラスが充実すれば、もっとダンスを楽しむ人が増えるかもしれない。

 ダンスは想像力や表現力を刺激して養ってくれるはず。それは多くの日本人が苦手としているんじゃなかったかしら。



2019年5月6日

未だ、螺旋階段の途中

 気がつけば元号が変わり、更新はまた1年以上も空いてしまいました…。相変わらず、三足の草鞋(バレエとヨガと研究)を続けています。

 「石の上にも三年」と言うけれど、私はひとつの課題に5年かかるのかもしれません。少し前に、修士論文の内容(関節角度を変えたときにハムストリングス各筋の活動に違いがある)が学術雑誌(体育測定評価18巻)に掲載されました。

 バレエとヨガにおいて、ハムはストレッチされる筋として有名ですが、私にとって泣きながらストレッチをした憎い相手(笑)。踊っていたころは毎日、ハムを伸ばしては使って使っては伸ばして(伸長させては収縮させて)の繰り返し。でも、ハムの長さが変わると力発揮が変わるから…などと考えたこともなく、ひたすら酷使していました。バレエやヨガにおいてハムをどう使うべきか、それについて私なりの答えを示すにはまだまだ勉強不足で経験不足。螺旋階段を1段ずつ進むしかないようです。


 
 

2018年3月5日

いつのまにやら1000時間超え…!


 1000時間!気がつかなかったのですが、2016年の終わりごろにyoga
 teaching hours が1000時間に達していました。Yoga Allianceでは1000時間以上のteaching経験をE-RYT200 (Experienced Registered Yoga Teacher)として登録してくれます。その制度を今年になって知りました(笑)。
Eが付いても別に、クラス内容が変わるわけでもありませんし、ハクが付いたわけでもありません。6年間・1300時間のteaching 経験があるといっても、教えるのが上手くなったなんて微塵も感じない。それどころか、上手くないなあと痛感することが年々増えている始末。この称号(!?)は、経験者ならもっと精進せよと言われている気がします。
 
 ここ数年、バレエに関わる時間がめっきり減ってしまい、日常において「座ってパソコン作業する時間」が増えたせいか、からだにヨガが与える効果を敏感に感じられるようになった気がします(単に運動不足な人になっただけか 笑)。これまで積み重ねてきたバレエの経験や練習が私自身の特徴を形成していたけれど、それが消失して素のままな自分が表面化したら、ヨガの効果を身にしみて分かるということなのでしょう。

 ヨガは、もうちょっとこうなりたい・変化したいという目標達成の一助になるはず。このツールをどのように各々の日常に落とし込むのが効果的なのか?この模索は近年、世界中で議論されています。昨年11月に臨床スポーツ医学会において、ヨガの効果に関する研究が日本でも少しずつ行われていると知りました。有名なアスリートもヨガをしているというエピソードが珍しくなくなった昨今、ヨガがもたらす明確な効果は何か?また、ヨガに期待されている効果とは?興味は尽きません。

 気がつけば、2018年も2カ月が過ぎてしまいました。ヨガクラスの変更について、Yinヨガクラスが土曜日をcloseし、月曜日に再開講しています。詳細はレギュラークラスのページからご確認ください。

 宜しくお願いいたします。

2017年1月16日

ご無沙汰しております…

 2016年は、一度も更新せずに過ぎてしまいました…。この間、大学院でハムストリングスの研究に取り組んできましたが、二足いや三足の草鞋は時間も体力も足りません。
 バレエとヨガと研究と、どこで結びつけられるか、まだ言葉にするのは難しいですが少しづつイメージし始めています。それはまたの機会に。

 今日は、Yinヨガクラスの時間変更についてお知らせさせていただきます。teaバレエスタジオで毎週開講していたYinヨガクラスは、2017年より毎月第4土曜日の18:40からとなります。現在、月1回の開講を予定しています。クラスが少なくなり残念ですが、より充実させた内容にできるよう、務めたいと思います。詳細はレギュラークラスのページをご覧ください。


今後とも宜しくお願いいたします。

2015年3月30日

春を迎えて。傍らにあるのは、本と電極。

 新年度を前に、桜が咲き始めました。

 4月より、新しいヨガクラスが始まることになりました。
teaバレエスタジオにて、毎週月曜日19:00より、Yin ヨガのクラスです。インヨガを再開できること、とても嬉しいです。
陽が落ちた時間に行うインヨガは、よい休息を取るための準備となり、翌日へエネルギーを貯める助けとなるでしょう。ご参加をお待ちしています。


 最近、分厚い本を手にすることが増えています。今、奮闘しているのは解剖学。


以前、Yoga Anatomy Lab. かつのり先生の講座で出会った本。骨格筋の絵が素敵で、解説も理解しやすく気に入ったのですが、高価で手が出せず…。それを図書館で見つけ、大喜び(笑)。

この本も参考にしながら、皮膚の表面に電極を貼り筋活動を調べています。
面白く、ややこしく、行きつ戻りつ、挑戦を繰り返す、春です。

2015年1月2日

新春と雪

 明けましておめでとうございます。
 元旦から雪が舞いました。降り止んでから散歩に出掛けたら、落葉の上には薄っすら雪が残っていました。

 二足の草鞋を履いて突っ走った2014年、はたと気がついたら大晦日、新年を迎えていました。今年もまだ履いたまま、もうひとっ走りする覚悟です(笑)。



 ↑冬晴れの日差しが気持ちよかったので、近隣の公園にある岩の上で。


 ひとつお知らせです。バレエ・リーブルでの「大人のヨガクラス」は、2015年1月13日より毎週火曜日10:00~11:30に変更となります。ご迷惑をおかけします。

 本年も宜しくお願いいたします。

2014年10月3日

バランス、balance

 いつの間にか、秋になっていました。

 この夏、一緒に歩いたスニーカー。EVA素材でヴィーガンです!
メッシュは軽くて、蒸れずに涼しかった。

 先月末、担当していたマウレアでのヴィンヤサを取り入れたフロー(呼吸にのせて流れるようにアーサナと動いていく)ヨガクラスと、陰ヨガクラスを終了しました。クラスを受けてくださった方々、本当にありがとうございました。

 私にとってこの2つのクラスは表裏一体でした。
 ヴィンヤサを使って呼吸と共に身体を動かせば、エネルギーは循環し活性化して、アクティブな状態に。筋肉を働かせてアーサナを行えば熱が生まれ、風が起こり上へ上がっていく。燃えて消えてしまえば、広がりと静けさが残る…。その空いた広がり(スペース)に、水を流してあげられるのが陰ヨガ。水を含めば、馴染んで柔らかくなり重く溜まっていく。すみずみまで染み渡れば、普段は意識しない関節やその周りの硬さに気がついたり、その硬さを緩めてみるとリラックスと穏やかさが訪れたりします。それは十分な休息から、次に活動するためのパワーをもらうこと。

 どんなこともバランスが大事と言われるけれど、エネルギーの流れもバランスが大事。身体の使い方もバランスが大事。そんなことを挑戦した半年間でした。
 もう少しレベルアップしたら、また取り組んでみたいテーマです。

 

2014年5月13日

ヨガと音楽とインド


 恵比寿のヨガスタジオ マウレアでクラスの担当を始めて、とっくにひと月が過ぎていました。素敵なスタジオ&常駐しているスタッフさん達の優しさに、私が行く度に癒されて元気をもらっています♪
昨日は10年来の友人がクラスを受けに来てくれました。
彼女は仕事とは別にずっとインド古典音楽を勉強していて、ボーカルとしてライヴも始めたところ。学生当時はお互いインドやその文化に興味があった記憶はないのに、いつの間にかそれぞれインド文化に足を踏み入れていたことに驚いてしまう。もっとも、彼女のほうが先にヨガも始めていたんじゃないかしら。私はヨガを学びだしてやっと、インドと切っても切れない関係だと知ったくらいだったので(笑)。

 ヨガのプラクティスにはナーダ・ヨガ=音のヨガというものがあって、マントラを唱えたり、マントラを音階にのせて歌う=キルタンがあります。
アメリカではキルタンの歌手が何人もメジャーデビューしていて、彼らの曲は西洋音楽系のヒーリングからPOPやROCK調にアレンジされたものが多いと思います。
私はインド古典音楽に触れる機会がほとんどなかったので、彼女が歌うインド古典音楽ライヴは面白い体験でした!

ライヴに使われたタンブーラ
特に気に入ったのは、振動を伴うベース音。空間を支配し身体に響くその正体は、弦楽器タンブーラのもの。伴奏として演奏の始まりから終わりまでずーっと持続音を奏でるための楽器で、リズムを作る打楽器タブラや主旋律の笛バーンスリのように目立つことなく、地味。でも間違いなくこの伴奏がインド古典音楽の雰囲気を作っていて、影の主役!?

 心身を浄化してくれそうな振動に浸れるインド古典音楽、そしてタンブーラと共鳴する声を持つ彼女のライヴ、また聴きに行きたいな。

2014年2月15日

雪まみれの2月

例年、東京でも1回は雪の降る1月が、今年はカラカラ。ところが2月に2回も大雪。東京の南の端っこ、積雪量は都心の倍以上…(笑)。


                                                            ↑ 家からの景色。
                翌朝にはさらに積もっていました…。

久しぶりに寒い冬となった今シーズン。コートは、暖かいけど動きやすい軽さがあって、撥水性もほしい!でもダウンコートはヴィーガンに反するし…。

偶然に見つけたのは、光電子という素材。着る人の遠赤外線(体温)を光電子繊維が吸収し放射し、人体に送り返すことで自然な暖かさが持続する、という。
いくつかのスポーツウェア・ブランドでは肌着からコートにまで採用されて、シリーズ展開されている。見知ったダンスウェア・ブランドから光電子コートを選んだ。

このコートが記録的大雪を乗り切らせてくれました。
一見、薄い中綿コート。それが吹雪のなかを歩いても暖かく、満員電車で汗ばんでも蒸れなかった優秀素材。
今後もお世話になりそうです。よろしく、光電子☆

2013年12月29日

七変化を目指す!?

少し前、豆腐屋さんでおからを買いました。一掴みで10円…。安すぎる(笑)。
作ったのは卯の花。砂糖を使わないレシピで、昆布と干ししいたけのだしが浸みて美味しい。ヴィーガンの一皿、できました。


大豆 → 豆腐 → おから と三変化。
豆好きで豆腐好きなので、おからも楽しんでみようと思い立ったのでした。

人の身体も変化していきます。陰ヨガでゆるみすぎた感じの身体を立て直すために、コアを探すことにしました。
ヨガのムーラ・バンダ(第一チャクラをロックすること)を意識する→骨盤底筋郡を目覚めさせる→基本姿勢が良くなる→バレエのアンドゥオールが改善される
七変化にはならなかったけれど、意識して毎日続けることの威力を実感することができました。骨盤調整は地道で面倒だけれど、効果あり。
来年も続けてあと二変化、起きてくれたら嬉しいけれど。

皆さまも良い年をお迎えください。

2013年11月23日

”最高の出来栄え”

 最近見た印象的なダンスが2つ心に残っているので、書き留めておこうと思う。

 ひとつは、まぎれもなく最高の出来栄えを観客に披露した。鍛え上げられた身体に練習で完成させたムーブメント、力強いエネルギーに乗せて感情を増幅させた数分間。その緊張感は目を釘付けにさせる迫力を観客に強いて、心を掴んでしまうもの。それを男女2人が共にレベルの高みに居て尊重し合い共鳴すると、黄金のパートナーと呼ばれたりする。バレエ史ではマーゴット・フォンティーンとルドルフ・ヌレエフ、聞くところではシルヴィ・ギエムとローラン・イレールとか。
 私が見たのは、フィギュアスケートNHK杯アイスダンスでフリーを滑ったメリル・デービスとチャーリー・ホワイトのフリーの演技。テレビ録画だったのに、目が離せなかった。

 もう一方は、上野まで観にいったシルヴィ・ギエムとマッシモ・ムッル主演の「カルメン」。上演中、私には強いられる緊張感も感情を引っ張られることも起きなかった。48歳にして今だ怖いほど鍛え上げられたギエムの身体が、まるで近所を散歩するような気楽さで舞台上を動き、タバコを吸い(マッツ・エック振付の作品なので)、ホセと対峙し、死んでいった。この有名すぎるストーリーを気負いなくあっさりと、手際よく料理された気がした。
 ”最高の出来栄え”などとっくの昔に通り過ぎて、その先に居るのだろうギエムの踊りを、私は多少困惑しながら観たと思う。ギエムとムッルが舞台上に存在し、対峙し、死んだ。私はそれを遠巻きに眺める群集のひとりだった。それが天才とも化け物とも評されるギエムの、出来栄えなのかもしれないと思えた。

2013年7月4日

陰ヨガでエネルギー充電?

ヨガクラスに来てくれたバレエダンサーの方。その日は全身の疲労感と、足の付け根(股関節)に動きづらさを感じるとのことだったので、陰ヨガのポーズを多用した内容にしてみました。

湿度が高い日が続くとだるさを感じたりします。身体の内側の流れが滞っているかもしれないので、循環させてあげるためにまずは呼吸と共に身体をのばしてみます。
身体の端から順に中央へ、水門を開けるように関節を動かすと、疲労感も流れてくれるようです。

日中に行うヨガクラスはこの後も呼吸とアサナをアクティブに進めて、エネルギーを使って深めていくのが通常です。それをあえて"陰"へとアプローチ。エネルギーを沈静化させていくように筋肉を休めて、呼吸と流れは意識し続けました。

エネルギーを活動させてからあえて沈静化させてゆく。身体とエネルギーの流れが意識的に結びついていれば、よりリラックスできる効果がありそうです。

帰り際、全身すっきりして足の付け根も軽くなりましたと喜んでくださったので、陰ヨガの効果に私が驚いてしまったのでした(笑)。