大学でヨガを教えるようになって9年目。大学で体育科目としてヨガを教えることについて、忘備録のように書いておこうと思う。
大学の授業において、共通教養科目のカテゴリ、体育・スポーツ演習のひとつとして、ヨガはトレーニング・フィットネス・エクササイズ系と位置づけられている。しかし、ヨガは運動量(身体活動量)が低い。安静時を1 METs(メッツ)としたときハタヨガは2.3 METs(太陽礼拝は3.5Mets)とされている(身体活動のメッツ表)。普通歩行(約67m/分)、ボウリング、太極拳、軽い自転車漕ぎ(16km/時未満)が3 METsなので、それらよりもヨガは運動量が低いのだ。ヨガは呼吸と共に気持ちよくストレッチしてるのだから(常温環境で実施した場合)消費カロリーも少ないし、運動として成立するの?という評価になるのは、「運動量」という尺度から判断した場合であろう。実際、期末に「ヨガは運動といえるのか」という小論文を課した際、履修者の9割から「ヨガは運動といえる」という論旨のレポートが返ってきた(講師への忖度があったかもしれないけど)。運動量が低くてもヨガは運動といえる理由として、個別に様々ある(個人で体験したヨガの効果が違う)点が、ヨガの優れているところだと私は思う。総じて、「ヨガは健康に役立つ」という結論に至り、アーサナが身体動作だから運動になる、とまとめられていた。現代の一般的な大学生(体育・スポーツ専攻でない学生)の運動観を垣間見た気がする。一方で、競技アスリート学生(インカレや国体に出場するレベル)のレポートでは、心身の疲労回復に役立つ効果(ヨガの自律神経系への作用)について発見があったとしつつ、運動ではないと論じている。まあ、そうなるよね。
ヨガにおいて運動量の低い身体動作(アーサナ)を練習するのはなぜか?大学の授業として成立させるためには、明確な目的が必要になる(ストレッチが気持ちいいから、では説得力に欠けるので)。ヨガにおいて身体を修練する目的は、“アーサナ(坐法/姿勢)が快適で安定していなければならない(ヨーガ・スートラ第2章46節)”とされるため、という説明が初心者から経験者まで納得してもらえるように思う。一方で、医科学的に計測してみれば、二足歩行のヒトは立位や座位姿勢を維持する際に微妙に揺れが生じており(健常者の重心動揺)、完全に静止することはない。重心動揺は心拍動や呼吸と関連して動揺し、外気温、加齢に伴う筋力低下、個人内の体調や疲労度によって変動するとされる。従って、自分の日常の姿勢に意識を向け、より快適で安定させるために身体を修練してみよう、これが授業の到達目標になる。
ところが、ヨガの効果として多くの人が期待するのは、柔軟性の向上である。健康・体育・スポーツ領域において、柔軟性とは関節を動かせる範囲(関節可動域)を意味している。一般的には、関節可動域を安易に増大させると怪我や痛みのリスクを高めので、”動きやすさ”の改善にアプローチする、というのが講師としてのスタンスになる。ただし、“動きやすさ”に関わる要素は多岐にわたり、個人差が大きく、努力で変えられない因子も存在する(詳細は割愛)。履修者には「あなたが“動きやすさ”を向上させるために授業で取り組んだ経験を今後のあなたのライフスタイルに生かす展望」をみつけてほしいと思う。
さあ、今年度もどのように伝えていけるだろうか。